ドラおじコラム
薬剤師の転職に年齢制限ってあるの? 35歳が限界って本当? 転職のプロに聞いてみた
「年齢が上がると転職しづらくなる」って話、聞いたことありますか。
ホワイトカラーの転職に関して「35歳限界説」なんて言葉もあったりするわけですが、これ、医療人材に関しては人手不足だから、薬剤師も年齢なんて関係ないっしょ?……と私、思っていたんですけど、実はそうでもないらしいんですよ。
どういうことなのか? 今回も薬剤師転職のプロ、ドラおじさんに話を聞いてみました。
登場人物紹介
- ドラおじさん
- 薬剤師専門の大手人材紹介会社に勤務していたアドバイザー。現在は独立し、本業の傍らで当サイトでの転職ご相談対応等を行う。(詳細はこちら)
- みどり
- 当サイトのナビゲーターで、都内の製薬会社でDI・学術担当として従事している設定の薬剤師。全国の悩める薬剤師たちを代表して、きわどい質問をドラおじさんにバンバンぶつけていきます!
結論から言うと、薬剤師でも転職と年齢は大いに関係がありまして、特にいまは都市部の大手のような人気求人に関しては、人事から「39歳まで」とか「30代まで」というふうに明言されます。各社、同じですね。
「39歳まで」って、なんで39なんですか?
……まあ、若ければ若いほど良いって感じなんですけど、39の理由はこのあと説明します。
なお、何もない地方とか、不人気エリアであれば40歳以降でもまだ全然いけます。そこは、薬剤師なんで。
ただ、ご自身がふるいに落とされる対象だということを自覚していない方もけっこういらっしゃるんで、今回は30歳以降で転職を考えている方には、ぜひ危機感を持っていただける内容にしたいですね。
なるべく救いのある感じでお願いします。笑
理由その1:新卒採用が大手各社、うまくいっている
今までって、薬剤師の正社員だと「40代まではいける」という話が多かったと思うんです。
もう少し具体的に言うと、60歳手前、59歳までは正社員で雇用してくれる会社ってあるにはあるものの、どうしても中小企業に割合が多くなってしまって、大手に関しては「50代はもう採用しない」という流れができていた。それが、直近4〜5年ぐらいの流れだったかなと認識しているんですけど。
今は違う、と。
はい。ここ1年〜1年半ぐらいで、大手中心に「やっぱり40代の採用もやめます」という話になってきているんです。
いったい何があったんですか?
新卒採用がうまくいっているというのが特に大きいです。「空白の2年間」っていう言葉があるんですけど、分かります?
あれですよね、薬学部が4年制から6年制に移行したタイミングで、2年間、新卒の薬剤師がろくに出てこなかったってやつですよね。
はい。これが時期としては2011〜2012年なんですけど、これの影響が完全に無くなって、どの会社も中途採用がほぼ落ち着いたのが、実はここ数年なんです。
へーそうなんだ。ていうか、まだ影響が残ってたんですね。
いまは正常な状態に戻っていて、例えば大手企業だと、中途採用の枠は1番多かった時期の3分の1ぐらいになっています。会社によっては、もう中途採用をしなくてもよくなりました、というところも出てきているぐらいなんです。
前ってだって、薬剤師資格さえあればどこでも行ける、みたいな話じゃありませんでした?
「空白の2年間」の直後は、実際にそんな感じでしたよね。いわゆるバブルですね。
今はもう、大手は「新卒だけ採用していれば良いです」って感じなので。あと地方の会社も、有名どころだと「新卒の採用が十分にできているので、中途はもう年間で5人ぐらいで良いです」みたいな。
少なっ。笑
なので、新卒の採用がちゃんと機能し始めているのと、各社、離職率が一時期に比べると低減してきている。この2つによって、そもそも年間の中途採用枠がかなり減ってきた、というのが前提にあります。
するとどうなるかというと、仮にもともと100人とか200人を中途で採っていたのに、それを例えば極端ですけど10人、20人しか採らなくなるんだったら、いわゆる「良い人」だけで10人、20人を採ればいいや、ってなりますよね、必然的に。
そうなってくると当然、中途の採用要件がもっと厳しくなる。で、ここで分かりやすく厳しくされやすいのがやっぱり……。
「年齢」かぁ〜。
そうなんです。
理由その2:歳行ってるとマネジメントしづらい
けっこう前になっちゃうんですけど、管理薬剤師の仕事についてお伝えした記事のなかで「管理薬剤師は正直、誰でもなれる」という話をしたの、覚えていますか?
覚えていますよ。ひどい話だなと思いながら聞いていましたからw
これがちょっと変わってきているんです。
今までの薬局のマネジメントって正直、シフトの管理とか、仕事の管理ができていればそれで事足りてたんですけど、それがここ2年くらいで「やっぱそれだけじゃダメだよね」という話にようやくなってきたんです。
この背景にあるのは例の、5〜6万近くある調剤薬局が国の方針で半分ぐらいに減らされる、という話なんですけど。すると当然、どの会社も生き残るために必死になるんで、患者さんに対して良いサービスができるように各社、頑張るんですよ。
「良いサービス」っていうのは?
要は接客です。おもてなし〜、とか、笑顔で〜、みたいな。
で、これをどうやって現場の薬剤師にやらせるか?という話なんですけど、これは簡単で、管理薬剤師に「やれ」って言わせるんです。
……だんだん話が見えてきました。笑
ここで年齢の話が出てくるんですが、いままで仕事の管理しかしていなかった人たちが、自分より年上の人をマネジメントするのって、けっこう難しいんですよ。
だって自分自身、今までろくにマネジメントされていないし、成長支援とかも何もされていないじゃないですか。だから、いざ自分でやろうとしても真似する対象がないんです。
そんな状況で、年上の、ただでさえ気を遣う人に対して「いまのダメです」とか「もっと笑顔増やしてください」とかいって、言うことを聞かせないといけない。キツくないですか?
ちょっと想像したくないですね……。
というのが上層部の目に見えているので、採用する側としては現場の一般薬剤師と、管理職の薬剤師の、年齢のバランスを考えざるを得ない。だから一般薬剤師については、管理職より年下を優先的に採用するわけです。
で、管理職の年齢というのが各社だいたい30代なんですよね。エリアマネージャーとかブロック長で30代後半から40代前半、管理薬剤師で20代後半から30代後半とか。
そうすると中途で採用する一般薬剤師の年齢は、それより低い年齢に限られるんで、「40代以降は無理」って話になるんです。
それが最初に言ってた、39という数字の意味ですか。
なので正社員の転職に関しては39歳までのほうが、選択肢が圧倒的に多い状態になってきていて、今後さらに加速すると思われます。会社によっては「35歳まで」と言っているところも出てきています。
ひどい話だなぁ〜。
私もそう思います。
いや〜だって、40歳になったからってそんなにダメですかねぇ?
私は、39と40の間には割と明確な差があると思ってるんです。40歳って、男女問わずいろいろ考え出す年齢なんですよね。人生、半分過ぎたわけなんで。俺ももう40かぁ、このままでいいのかなぁ? とか、このまま死ぬのかな……とか。
これって、要は自分を優先しだすということなんですよ。
で、かたや若い新卒の子たちはというと、素直に言うこと聞いてくれる。会社のカラーに染まってくれるし、会社に尽くしてくれるし、「前の会社ではどうだった」とか変なこと言わない。そりゃあ、新卒を採りたくもなりますよね。
私、歳取るのちょっと辛いんですけど……w
だから求人って、本当は年齢に上限を設けちゃいけないって法律で決まっているんですけど、実際には、裏側ではこうなっちゃってるんですよね。
歳行ってても中途で問題なく転職できる3つの例外
薬剤師の転職に年齢が重要なのはよく分かったんですけど、既に40を超えている人とか、もうすぐ超えちゃいそうという年齢の薬剤師は、どうすればいいんですかね?
いったんは、年齢に関係なく採用したいと思われる人材になりましょう、という回答になります。ありきたりですけど。
つまり、歳行ってても中途で問題なく採用してもらえるケースがあるってこと?
はい。大きく3つありますが、まずは「管理職経験がある人」。
エリアマネージャーになれる人、もしくはやっていた人。あるいは、管理薬剤師をやっていて複数店舗を掛け持ちしていました、みたいな人とか。これは40を超えていても大丈夫です。
そりゃそうですよね。だってさっきの理屈でいうと、一般の薬剤師が管理職より年上だと嫌だという話なんで、逆にいえば管理職として転職するんだったら問題ないということになりますよね。
そうです。とはいえ実績は問われるんで、管理職経験のない人がいきなりエリアマネージャーとして転職する、とかは無理ですけどね。もちろん。
管理職経験のない一般薬剤師がこのルートを選択する場合は、まずはキャリアアップをしようという話になるんで、今の勤め先でそれができるのか、ポジションの空きがでる見込みがどれくらいあるのか、などを確認する。で、難しそうな場合は、キャリアアップをしやすい会社に転職する、と。基本的には大手になります。
そしてもう1つは「利益を出した実績を持っている人」。
例えば、店舗の売上や利益の改善をしました、コスト改善ができました、という実績がある人。あと、今だと在宅で何かしら特殊技能を持っていたり、良い実績を持っていたりする人。例えば、拠点の立ち上げをして患者集めをして、1ヶ月で患者を100人獲得しました、みたいな。
またハードルが高そうですが……。
そうですね。でも、利益さえ出してくれれば年齢なんかどうでもいいですからね。
そして最後、3つ目は「年下と上手くやれたエピソードを持っている人」。
例えば、プロジェクトチームで年下の子の下にいました、とか。もしくは、40代なんだけどめちゃくちゃ物腰が柔らかくて、直近でも5年間、20代の管理薬剤師と上手くやっていた、とか。
これは、そこそこありそうな気がしますね。
気をつけてほしいのが、この話を面接の場でするときに「教えていた」系のエピソードはダメです。偉そうなので。逆に評価が下がります。教えていたので上手くやれますよ、というのは、要するにガキ大将をやっていましたというだけなので。
なるほどw
年下と絡んでいた、というだけではダメなんですよ。年下は、何もしていなくても年上に気を遣うものなので。気を遣わせる時点でダメ。なのでその心配が比較的少ない「年下の下にいた」という事実が重視されるわけです。
アピールできるものがない人は「リファラル」を狙おう
あの、いま言ってたアピールポイントが一切ない人で、歳行っちゃったって人は、どうしたらいいですか……?
そういう方はもう紹介会社を使わないで、社員紹介、いわゆるリファラルで入り込むのを考えましょう。実際に、大手ドラッグストアとか大手調剤薬局でも、40代の社員紹介だったら普通にやっていますよ。
えっと、つまり正攻法で行ったらダメだけど、リファラルだったらいける可能性があるということ?
そうです。
なんでそうなるんですか?
まずリファラルは「紹介会社経由に比べて採用コストが掛からない」というのがひとつあるんですけど。
もうひとつ、今までの話でもお分かりいただけるように、40代以降の薬剤師を採用するにあたって会社がいちばん恐れていることは「和が乱れること」「他の薬剤師に害悪があること」なんですよね。で、リファラルだとその心配がほぼ無いんです。
リファラルで入る人って、誰かのお墨付きがあるわけですよね。そして入社する本人からしても、そのお墨付きをくれた人に対して一定の義理立てをしないといけないので、責任感を持って仕事をしてもらえる可能性が高い。なので基本、そんな変なことにはならないんですよ。
なるほど。
例えばみどりさんが大手の人事だとして、普通に書類応募で43歳の薬剤師が来たら、ちょっと顔をしかめるじゃないですか。
いや、人事やったことないんで分からないですけどw
でもこれが例えばですよ。
『こいつ、40過ぎているんですけど、すごい真面目だし素直で良いやつなんですよ。今ちょっと会社が買収されて、給与条件とかが変わっちゃって、転職を考えているらしいんですけど、ちょうど自分のエリアで一緒に働いてもらいたいポジションがあって、もしみどりさんが差し支えなければ面接していただきたいんですけど』
って、自社の結構マトモなエリアマネージャーが言ってきたら、どうですか。別にいいかなって思いません?
確かに。「一緒に働きたい」と言っているなら、ちゃんと働いてくれるかも、って思う気がします。
リファラルだと採用角度が上がるというのは、こういう理屈ですね。
ただ一方で、入った人が上手く機能しないと共倒れする、紹介者と一緒に2人とも辞めるというリスクがあるのは人事側がけっこう気にしていて。なので、面接は絶対にするんですよね。
えっと、じゃあ……リファラルも無理な場合は? 紹介してくれそうな人が居ない、とか……。
その場合はもう「超へき地に行く」しかないですね。主要都市はもう諦める。関東1都3県とか、京都、大阪、兵庫とか、札幌とか仙台とかは捨てる。そして鳥取とか、島根とかに行く。この辺りなら大手もふつうに募集していますし、へき地になれば40歳と言わずに45歳とかでもいけます。
なるほど……いつものやつですねw
まあそれがある意味、柔軟さのアピールでもある、という話です。どんな田舎でも平気です、っていう。
そう考えると気楽ですね。色んなものを諦めさえすれば、40, 50でも少なくとも食いぶちはある、と。
そこが薬剤師という資格の良いところですね。普通はこうはいかないですから。
あくまでも管理職でない、勤務薬剤師の正社員での転職は、もう現状では30代までしか選択肢が広くありません。40歳以上の人はもう大手とか、地場中堅の1番店みたいなところは難しくて、有名でない中堅とか、中小を選ぶしかない時代になっています。
新卒採用が上手くいっているところは基本的にはもう、そういう話だということですよね。
いや〜ほんと、歳取るの嫌ですね……。
でも、逆に言うと若ければそれだけでアドバンテージということなので、若い人のやるべきことってもう決まってきますよね。
福利厚生とかそういうものを全く気にしないのなら別にいいんですけど、気にするんだったら大手一択なので、30代前半までに大手に行きましょう。できれば新卒から行きましょう。その後、自由なキャリアを描きたいんだったら、利益を出せる人材になりましょう、そして管理職になりましょう。という話でした。
さっきの話の続きですけど、アピールできるものが何もない人で、リファラルで繋いでくれそうな友達も居なくて、僻地に行くのも嫌な場合はどうしたらいいですか?
それってどういう想定の話をされてるんですか?
いや、知らないですけどw
その場合は、現職に残れば良いんじゃないですかね……正社員であればクビにはそうそうならないですから。
勤め先がコロナで潰れそうとか、上司からパワハラを受けているから現職に残るのも無理で、どうしても辞めたいという場合は?
それはもう数撃ちゃ当たる戦法で、応募して応募して応募しまくるしか無いと思います。
それでもダメだったら?
私に相談してください。
分かりました。笑
- 最終更新日:2022年4月12日
- カテゴリー:ドラおじコラム